Mリーグ深掘り解説① 動物的感覚の勝利と「メンゼン力」の大切さ

今回のMリーグのハイライトの一つだと私が感じた対局を紹介します。麻雀は面白いと改めて感じさせてくれる対局でした。キーワードは「メンゼン力」と「ツモ力」です。
土田浩翔 2026.01.17
読者限定

今回はMリーグの対局から、わたし土田浩翔が印象に残ったシーンを取り上げて解説していければと思います。

麻雀にまつわる質問、疑問があればコメント欄にお寄せください。基本的なところから戦術的な部分まで何でもかまいません。できる限りお答えしていきたいと思っています。

鳴かなかった瑞原さん

昨年12月8日の第1戦ですね。石井一馬さんが切った5ソーを、瑞原明奈さんが鳴かなかったシーンですね。

石井さんの切った5ソーを瑞原さんがポンしなかったシーン=Mリーグ提供

石井さんの切った5ソーを瑞原さんがポンしなかったシーン=Mリーグ提供

まず言いたいのは7巡目に赤牌が2つ手牌にあって、鳴くのを止められるのかということですね。現状は瑞原さんは3万7000点持っていてトップ目にたっています。ほかのプレイヤーからはかなり離れてトップ位置を維持している状況で、赤ウーが2つあって、345の三色が見えている手牌でした。5ソーと3ピンが高めですので、それが出た時にポンする打ち手が多いと思います。

それなら安めでも5800点ありますから、十分な加点になると考えるのが普通です。すでに+12000点ですから5800点でもセーフティーリードになりますから、ここでポンする人がほとんどだと思います。西家の一馬さんの5ソーをポンすればいいだけです。ただ瑞原さんの頭の中では3~6ソーのリャンメンができていましたし、5ソーを引いて手広くなりましたから、感触が非常に良かったんだと思います。瑞原さんは自分でもゴリラ麻雀と言っていますが、体が鋭敏に反応して麻雀を打つタイプなんだと思います。

そして、「これはメンゼンでいけるな」となったんだと思います。5ソーが場に1枚出たということは、瑞原さん自身の目から5ソーが4枚見えたことになりますから、3〜6ソー待ちがかなりよく見えたのでしょう。ですから「よし、いい待ちになったな」と考えて鳴かなかったんだと思います。瑞原さんでなければポンになりますよ。

ポンせず、その後何が起きたのか?

それで何が起きたかを見てみましょう。その後で、西を鳴かれて石井一馬さんにテンパイを入れられて、まずいなと思ったのだということは想像できますね。そうしたら、瑞原さんが3~6ソー待ちでテンパイが入って、そこはヤミテンにしました。そして、巡目も深くなったなか想定外のリーチがかかったのです。「滝沢さんがリーチをかけるなら、3~6ソーが滝沢さんの河にないので私もリーチして闘う」と瑞原さんの戦闘態勢に火が付いたのだと思います。

滝沢さんがリーチをかけた場面=Mリーグ提供

滝沢さんがリーチをかけた場面=Mリーグ提供

3〜6ソーが滝沢さんの河にあるならばヤミテンにするところでしたが、滝沢さんにも3〜6ソーは無筋でした。ただ冷静に考えた場合、親の追いかけリーチの方が怖いということになります。そうすると親の現物で滝沢さんに放銃されてしまうこともありますから、追いかけない人も半分ぐらいいると思います。あまり子方をあおらないように。

ところが瑞原さんは、「あなたがリーチなら私もリーチするわ」みたいな真っ向勝負に出ていきました。そうすると、そもそも滝沢さんのこのリーチは何だったんだという話が出てきます。6ピンを切っているので、筋待ちしている利点プラス石井一馬さんの河にも6ピンがありましたから、もしかしたらその筋を頼ってくれるかなという期待はありました。2ピン、2ピン、2ピンと場に出ていますから、3ピンは山にけっこう残っているのではと滝沢さんは読んでいたかもしれません。まさか瑞原さんがこんな形で3ピンを3枚持っているとは誰も思っていないわけです。つまり、滝沢さん側から見れば、ドラの9ピンさえ通すことができれば勝算ありという算段だったように見えました。しかも一馬さんも仕掛けて親落としに出ているし、どちらかがアガればいい、そんな思いも含めたリーチだったように見えます。そうしたら(瑞原さんのアガりという)こんな大惨事が待ちうけていたということです。ファイトクラブのオハコである「ガラクタリーチ」の一つだったのですが、今局は裏目に出てしまいました。カンチャン待ちの中でも3や7で待つ形は一番悪いとされていますが、場況次第ではアガり易いときもあり、滝沢さんはその場況に敗れた形となりました。

今回のケースは滝沢さん自身の河と一馬さんの河に奇しくも6ピンがあったことが3ピン待ちリーチを後押ししてしまいましたね。滝沢さんも裏インタビューで言っていましたが「これはなかったですね」と。開けられた瑞原さんの手牌にあったアンコの3ピンを見て愕然としたようです。

多くの打ち手がポンするであろう5ソーを鳴かずにメンゼンの大物手をイメージできた瑞原さんのファインプレーだったわけで、称賛というより絶賛に値します。

5ソーをポンすると一馬さんに六万がいきます。瑞原さんは七万を切っていますから、カン六万といいう待ちは考えにくく、カン三万ならあり得るので、一馬さんは高め三万でなく六万をツモ切ったでしょう。つまり、喰いタン赤赤の5800でこの局は終わっていたのです。5800点での連荘だった局を瑞原さんは18000点和了まで持っていきました。これは瑞原流儀の極みと言っても過言ではなく、読者のみなさんにも是非この爆発的な打法を見習っていただきたいものです。

瑞原さんが座っていると、対戦相手はその爆発がいつ起きるのか?という見えない影に怯える戦いを強いられることになります。常識にとらわれず、本能で打てる瑞原さんは相当な強さを持っています。なんだろう、この強さは?と対戦相手にとっては人間瑞原ではなく動物瑞原と対峙しているような感覚に陥ってしまうのではないでしょうか。

防ぐ術はなかった

この記事は無料で続きを読めます

続きは、2548文字あります。

すでに登録された方はこちら

読者限定
「麻雀」それは自分自身を知るためのもの 普及に向けた理想と現実